双極性感情障害について
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双極性感情障害について
BIPOLAR DISORDER
双極性感情障害とは、気分が落ち込み、何をしても楽しめないといった「抑うつ状態」と、気分がとても良く、エネルギーにあふれ活動的になるといった「躁状態」を繰り返す病気です。単に双極性障害と呼ぶことも多く、昔は躁うつ病と言われていたこともあります。
辛いことがあると気分が落ち込み、嬉しいことがあると気分が良くなることは誰でも起きることです。しかし双極性感情障害は、通常の気分の波よりもはるかに激しく、または長く続くことが特徴です。躁状態や抑うつ状態は、何らかのきっかけがあって始まることもあれば、特にきっかけがなく突然始まることもあります。
日本では約100人に1人が双極性感情障害を発症すると言われています。これはうつ病よりは少ない頻度ですが、抑うつ状態の症状はうつ病と似ているため、実際の数は報告されているよりも多い可能性があります。
双極性感情障害の原因はストレスや環境、遺伝など様々な要因が考えられていますが、はっきりとは分かっていません。うつ病と違い遺伝的な要因も大きいと考えられています。
双極性障害には「Ⅰ型」と「Ⅱ型」があります。Ⅰ型は躁状態と抑うつ状態を繰り返しますが、Ⅱ型は躁状態が軽い(軽躁)ため、人によっては抑うつ状態と抑うつ状態が改善した状態を繰り返しているようにしか見えない場合もあります。
双極性感情障害の症状は、躁状態、抑うつ状態でそれぞれ違います。Ⅰ型の場合は入院が必要なほどの激しい躁状態が見られることがありますが、Ⅱ型の場合は軽い躁症状(軽躁状態)しか現れません。
抑うつ状態の時はうつ病と症状が似ていることから、これまでに明らかな躁状態と分かる状態を経験したことがない場合には診断が難しいです。長らくうつ病として治療されていて、途中で躁状態が出現したことで診断が双極性感情障害に変わることもあります。
躁状態と抑うつ状態は基本的には交互に現れるものですが、躁状態と抑うつ状態の症状が同時に見られることもあります(躁うつ混合状態)。
双極性感情障害の治療は、薬物療法が基本です。気分安定薬や抗精神病薬といった種類の薬を使うことが多いですが、病状に応じて薬を選択、調整していきます。
薬物療法に加えて心理療法も重要です。心理療法の中でも、自分の病気について知り、病気の症状に気づくことができるようになる心理教育は、症状の安定や再発予防にとって大事です。
心理療法のうち、うつ病でも行われる認知行動療法も行われることがあります。ものの見方・考え方(認知)や行動を変えていく心理療法で、再発予防や抑うつ症状の軽減に効果があると言われています。当院では心理士による認知行動療法(自費)を行っています。
また、生活スタイルの改善も症状の軽減や再発予防に重要です。特に、睡眠を中心とした生活リズムを整えることや、主に対人関係を中心としたストレスを極力減らすことが大切です。
その他の専門的な治療として、うつ病の治療にも行われる修正型電気けいれん療法(mECT)を行うことがあります。
双極性感情障害はきちんと治療すれば安定した状態で生活ができるものの、長く付き合っていく必要がある病気です。特に躁状態の時は、気分が良く、調子が良いと感じることが多いため、病気であると自覚することが難しい場合があります。しかし、そのまま放置すると徐々に症状が悪化し、気分が安定した期間が短くなっていき、躁状態と抑うつ状態を短期間に繰り返す「急速交代型(ラピッドサイクラー)」となってしまう危険があるため、早めに治療することをお勧めします。
上記はあくまで一般的な双極性感情障害についての情報です。個々の状況や病状に応じて個別のアプローチが必要になることも多いため、分からないことや不安なことがあれば、まずは主治医に相談しましょう。