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うつ病は一言で説明すると気分が落ち込み、意欲がない状態が長時間続くこころの病気です。誰でもつらいことや悲しいことがあると気分が沈んだり、やる気がなくなることがあります。しかしうつ病になると日常生活に支障が及ぶほどの言葉で表現できない気分の落ち込みがみられ、他の症状も付随し、さらに一時的ではなく長時間続きます。
うつ病の診断は心理検査など補助的検査を用いながら医師の総合的な判断によって決まります。その際の判断の基準として「ICD-10 精神および行動の障害」や「DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル」を用います。そこでは①ほぼ一日中気分の落ち込み②興味や喜びの消失③エネルギーの低下や倦怠感のうち2項目以上が2週間以上続くことが1つの基準となっています。また不眠や食欲低下、集中力低下、死にたい気持ちといった他の症状を加味しながら軽症から重症までを判定していきます。
うつ病に出やすい他の症状としては以下のようなものがあります。
・漠然とした不安が続く
・悲観的な考えが頻繁に浮かび、自分を責めてしまう
・集中力が低下し、物忘れや仕事などでミスをしてしまう
・外見や身なりを気にする余裕がなくなる
・気持ちを紛らわすためにお酒を毎日飲んでいる
・死にたい、消えてしまいたいといった気持ちになる
・夜中に目が覚めやすく、目覚ましより早く起きる
・食欲がなく、何を食べてもおいしいと感じない
・原因不明の頭痛や腹痛といった痛みが続く
・動悸や息苦しさがある
・めまいや耳鳴りがある
うつ病は「こころの風邪」というキャッチフレーズで2000年前後から日本でも世間一般に認識されるようになりました。しかし今でもまだ「うつ病はこころが弱い人がなるもの」「うつ病は気合いが足りないだけ」といった考えが残っております。これは誤った考えであり、医学ではこころの病気≒脳の病気と捉えており、誰でもなり得る病気であり、気合いの問題ではなくきちんとした治療が必要な病気です。
現在は人の遺伝子が全て解明されるほど医学が進歩しておりますが、脳の複雑な構造やメカニズムについてはまだ十分に解明されておりません。うつ病の発病メカニズムも十分にわかっておりませんが、セロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の低下によって起こるとしたモノアミン仮説や、ストレスを受けることで脳内に炎症が起こり神経細胞が障害されるという神経炎症仮説が言われています。
治療法としては環境調整(特に休養)、薬物療法、精神療法が中心となります。うつ病は先程述べた脳の病気であり、モノアミン仮説や神経炎症仮説を根拠としてまずは脳のダメージを修復するため休養が基本となります。死にたい気持ちが強く行動してしまいそうな場合や自宅では仕事などのことが頭から離れず十分な休養がとれない場合は入院治療も検討します。また完全な休養が難しい場合や休養だけでは十分な修復が図れないような場合に抗うつ薬といった薬物療法を必要最小限に行います。
脳が少し回復してきた段階で精神療法や必要に応じてカウンセリングを行っていきます。詳細は診療内容をご参照ください。
うつ病で苦しむ人は世界で3億人以上おり、日本でも100万人以上が治療を受けており、治療を受けていない人を含めるともっと多いと言われています。生涯有病率も10%前後の報告が多く、10人に1人がうつ病になるということなので身近な病気であることがお分かりになると思います。
ご自身に当てはまったり、周りで気になる方がいれば受診を勧めてください。脳のダメージは軽ければ軽いほど回復が早いため、どうしようもないほど悪くなってから受診するより気になる段階でご相談していただくことが肝心です。「病院に行ったほうがいいかも」と思われた時がつらい毎日から抜け出すチャンスです。
院長 柳原孝章