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適応障害とは簡単に説明すると、なんらかのストレスによってその環境に適応できず、社会生活に支障を及ぼすほどのこころや体に症状がみられる病気です。
ストレスは主に生活での出来事が多く、仕事や学校、家庭、恋愛、病気などです。
仕事:就職や転職、異動による職場内の人間関係や仕事内容の変化
学校:クラス替えや転校、いじめ、友人との人間関係の変化、勉強へのプレッシャー
家庭:夫婦の不仲、身内の死別、義理の両親との関係、経済的問題、出産育児、転居
恋愛:恋人との別れ、恋人との同棲がうまくいかない
病気:がんなどの大きな病気、治らない慢性的な病気、苦痛の大きな病気
他にも社会環境の変化(騒音や異臭、海外などの異文化での生活、大規模災害など)でも起こることがあり、最近では新型コロナウイルス感染症によるこころの病気が問題となりました。
適応障害の症状はその人の性格や受けているストレスや環境によって異なってきます。大きく分けるとこころに出る症状、体に出る症状、行動に表れる症状に分けられ、この中の1つのみの場合や混合してみられる場合があります。
こころ:憂うつな気分、不安、涙もろい、意欲低下、イライラ、緊張など
体:倦怠感、めまい、頭痛、動悸、腹痛や下痢、手足のしびれ、食欲低下、不眠など
行動:暴食、過剰飲酒、無断欠勤、無謀な運転やケンカなど
多くの場合でストレスから離れると症状が軽くなります。例えば仕事がストレスになっている方は平日に憂うつな気分が続くものの、休日は憂うつさがなくなり自分の趣味などを楽しむことができます。またストレスが解消された場合は6ヵ月以内に症状も改善されるとされています。
明確にストレスが存在し、そのストレスによって予想される反応よりも著しい症状が出現、社会生活に支障を及ぼしていることが医師の診察で判明すれば診断されます。
詳細は下記の診断基準をご参照ください。
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A:はっきりと確認できるストレス因に反応して、そのストレス因の始まりから3ヵ月以内に情動面または行動面の症状が出現。
B:これらの症状や行動は臨床的に意味のあるもので、それは以下のうち1つまたは両方の証拠がある。
1.症状の重症度や表現型に影響を与えうる外的文脈や文化的要因を考慮に入れても、そのストレス因に不釣り合いな程度や強度をもつ著しい苦痛。
2.社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の重大な障害。
C:そのストレス関連障害は他の精神疾患の基準を満たしていないし、すでに存在している精神疾患の単なる悪化でもない。その症状は正常の死別反応を示すものではない。
E:そのストレス因、またはその結果がひとたび終結すると、症状がその後さらに6ヵ月以上持続することはない。
該当すれば特定せよ
急性:その障害の持続が6ヵ月未満。 持続性(慢性):その障害が6ヵ月より長く続く。
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※『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)より引用
典型的な適応障害では症状の項でご説明したようにストレスから離れることで症状が軽くなり、自分の行動に罪悪感を持つことが少なく攻撃的な行動がみられることがあります。一方うつ病ではストレス要因がはっきりしないことや、ストレスがあってそこから離れても症状が軽くなることがありません。また無気力さが続き、過度に自分を責めてしまい、「自分は取り返しのつかない罪を犯した」という妄想まで発展することもあります。ただし適応障害とうつ病は症状が似ており、見分けがつかないこともあります。また適応障害からうつ病に診断が変更されることもあります。
以下のような人がなりやすいと言われています。
責任感強く何事も真面目に取り組む
「〇〇すべき」という傾向が強く融通がきかない
人から頼まれると断れない
繊細で敏感なタイプ
他人からの評価が気になる
ストレス発散する手段が乏しく、我慢しやすい
相談できる相手がいない
人の気持ちや周囲の状況をうまくつかめない
一番大切なことは1人で悩まないことです。ストレスに適応できない状況が長期に続くことでうつ病になることや、より重症化する可能性があるためです。周りの信頼できる方に相談しましょう。相談する方がいない、相談してもうまくいかないといった場合は早めに受診をお勧めします。
①ストレス要因が解決できる場合は解決手段を検討します。しかし解決できない場合も多々あります。
②症状が重い場合、すなわち脳が極度に疲労していたり過覚醒の状態にあるときは、ストレス要因から一旦離れ休養できるか検討します。具体的には休職や入院といった手段が挙げられます。また離れることが難しい状況では脳の状態を改善させるために一時的に薬物療法を行うこともあります。
③ストレス要因に対しての見方や感情コントロール、ストレス発散について精神療法やカウンセリングで話し合い、適応力を上げていきます。
(詳細は「コロナうつを予防」をご参照ください)
適応障害に限らず、こころの病気の治療中は十分な睡眠・バランスの良い食事・適度な運動(症状が重いときの運動は症状悪化のおそれがあるため休養が優先されます)が基本となります。症状が改善したあとはそこで終わりではなく、違ったストレス要因で再発する可能性もあるためぜひ再発予防について主治医と話し合ってみましょう。
院長 柳原孝章