ブログ|福岡市西区姪浜の心療内科・精神科|ひとやすみこころのクリニック

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それぞれの時間

今年も防災をより考える時期となりました。特に先月は記録的な大雨もあり、まもなく台風の時期にもなります。被害に遭われた方は今もご不便な生活が続いていることと思われます。安心できる生活が少しでも早く戻ってこられるようお祈り申し上げます。

私たちは、大災害に見舞われるほどの体験ではなくとも大なり小なり傷ついてきた体験や、大切な人や物事を失った体験を心の中に抱えながら生きています。普段はそれらと適度に距離を置き、直視しないようにしながら毎日を過ごせていますが、それが抱えきれないほどの衝撃だったり、たとえ小さなことでも積み重なっていったりした時に、心や身体にいつもと違う変化が表れ、時には歩を止めてしまうことがあります。

 

数年前に見たテレビドラマに若くして夫を亡くした後も義父と一見変わりない、けれど周囲から見れば奇妙にも見える生活を7年間続けている主人公の物語がありました*。その第1話に彼女のこんなセリフがあります。「みんな前へ進めって言うけど、とどまるのって、そんなにダメなことなのかな。…まだ前になんて行きたくないのさ」。

 

しかしながら、その時間が長くなるほど自分だけが周りから取り残されてしまったような気持ちになりますし、周囲の悪気のない言葉にさらに傷ついたり自分を責めたりしてしまいます。ちょっと進んだと思ってもまた同じところに引き戻されてしまう感覚に焦りが募り、目の前に深い霧が立ち込めているようで絶望的な気持ちにもなるかもしれません。

 

その後もドラマは静かに進み、6話では彼女がずっと手元に置いていた夫の小さな遺骨のかけらをお墓に返すシーンが描かれます。そして、「これ手放してさ、夫のこと忘れないの?」と問われた彼女は「死ぬまで忘れない」と答えます。

彼女がそこにいたるまでに必要だった時間は7年でしたが、私たち一人ひとりにもそれぞれ違った時間の長さと道のりがあるのではないかと思います。カウンセリングでお会いする患者様とは、いつどんな風に訪れるかわからないそのときまで一緒に時間を過ごしていくのだろうと思うことがあります。

 

さて、カウンセリングの新規受付を8月から再開いたしました。お待ちいただいていた方には申し訳ございませんでした。それに合わせて、回数を区切って行っていた無料のカウンセリングを「心理プログラム」と改称し、いくつかのプログラムをご用意いたしました。取り組むのに適した時期やプログラムは患者様それぞれに異なりますので、主治医のほうから必要と判断した方に時期を見計らってご案内しています。詳しくは主治医にお尋ねください。追ってこのホームページ上でもご案内する予定です。

*昨日のカレー、明日のパン(脚本:木皿泉)

臨床心理士・公認心理師 石澤 桂子

 

 

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