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当院には気分の落ち込みが強くどうしていいかわからず当院を受診され、うつ病や適応障害といった診断を受け、休職される方が多くいらっしゃいます。休職をお勧めした際に、休職したほうがよいのか悩まれている方が大半です。休職を経験したことがない方であれば当然だと思いますので、そういった方に向けて今回は
①休職すべきかどうかの判断基準
②休職制度とは
③休職中の過ごし方
④復職の判断基準
⑤復職時に検討すべきこと
をシリーズに分けてご説明していきたいと思います。
今回は第一回目①休職すべきかどうかの判断基準についてお話いたします。
最初に答えから話してしまうと
休職すべきかどうかは休職すべき状態(病態)かどうかで判断します。
当たり前のことだと思われるかもしれませんが、実際に診察室で休職しましょうとお勧めしたときに以下のようなことを話されて、迷われることが多いです。
・今抱えている仕事は自分が抜けたら仕事が回らないので仕事を休めない
・休職すると職場の人に迷惑がかかるのでできない
・人事評価に響くかもしれない
・家族もいて、休職すると経済的に厳しいので休めない
責任感が強い方ほど、上記の発言をされます。しかし判断基準が仕事内容や職場環境、家庭環境といったものが加われば加わるほど複雑になり、休職すべきかどうかがわからなくなるのです。
上記の発言を一つずつ紐解いていきます。
・今抱えている仕事は自分が抜けたら仕事が回らないので仕事を休めない
→会社が社員一人抜けただけで仕事が回らず、会社が止まる(倒産する)ということはあり得ません。確かに多少の損失や負荷がかかるかもしれませんが、必ず会社は社員が抜けた穴を埋めます。そもそも社員が一人抜けて大きな損失を出すような組織運営は正常な組織運営といえず、社員が突然交通事故に遭うといったリスクもあるわけなのでいつどの社員がいなくてもいいように組織運営をするのが健全な会社であり、そういった会社が大多数です。
・休職すると職場の人に迷惑がかかるのでできない
→そもそも休職すべき状態にまでなっているということは仕事のパフォーマンスがすでに落ちており、周囲に迷惑をかけている状態です。いたずらに能率が落ちた仕事をするよりも、一時的に周囲に任せしっかり治療に専念し、元気になった状態で戻ったほうが周囲も助かります。
・人事評価に響くかもしれない
→こちらも上記と同様にすでにパフォーマンスが落ちており、人事評価が下がっている可能性があります。一刻も早くすべきことは現在の状態から回復し、再び評価されるような仕事をすることです。
・家族もいて、休職すると経済的に厳しいので休めない
→休職すべき状態にまでなっているということは家族にとっても緊急事態です。その方だけが休職すれば解決する問題ではなく、休職中も経済的に生活していけるような設計を家族全員で取り組むべきです。そうすることで復職する際も過度なプレッシャーがかからないので、再発リスクが低くなります。
さらに付け加えると休職すべき状態で仕事を続けた場合はさらに状態(病状)が悪化するリスクが非常に高く、どんなに頑張っても仕事に行けない状態になることが多いです。そして脳を酷使した影響で治療期間が長引いたり、緊急入院が必要になったりと治療自体も難しいものとなります。
だからこそ、休職すべきかどうかは休職すべき状態かどうかでシンプルに判断して、しっかりと治療に取り組んでいただければと思います。ご注意していただきたいのは今回の説明は休職を推奨するものではありません。もちろん休職せずに状態の改善が見込めそうな治療手段がある場合はそちらを優先して行っていくことが基本です。
次回は休職制度について説明していきたいと思います。
院長 柳原孝章