ブログ|福岡市西区姪浜の心療内科・精神科|ひとやすみこころのクリニック

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復職までのこころの道のり

開院から1年、多くの患者様にお会いすることができました。ただ、現在はカウンセリングと心理検査の新規申込みを一時休止せざるを得ず、皆様にはご迷惑をおかけしております。再開時には改めてホームページ上でもご案内しますので、今しばらくお待ちください。

 

さて、前回から院長ブログで休職や復職に関するシリーズが始まりましたが、休職はたいへん大きな出来事ですし、先が見えない中で迷いや不安が生まれるのは当然のことと思います。
そこで今回は、うつ病で休職した人々の生の声(インタビュー)をもとに、休職から復職にいたる心理的な変化を当事者の視点から探索した研究をご紹介します。やや古い研究で、対象もうつ病による休職者と限定されていますが、休職するかどうか迷っている方や休職中の方に少しでも参考になれば幸いです。

休職前の<空回りの状態>:
休職直前には[仕事の束縛と病気の不安の板挟み]に葛藤します。「失敗感の塊」、「会社自体から離れたい」、「仕事に穴をあける罪悪感」といった様々な気持ちで身動きがとれなくなる時期です。

<離れる>段階:
迷いながらも休職に「ふんぎって」仕事から[物理的に距離をおく]ものの、しばらくは「休んでいるようでいて全然休んでない」状態が続きます。その後、底をつくように何も考えられなくなる時期が来て、次第に「休めてるなーって」実感するようになり[心の負担も軽くなって]きます。

<向き合う>段階:
休めてくると「だんだんと自分と仕事の距離が離れて」きて、[病気に向き合い][仕事との関係を見つめなおす]時期がやってきます。カウンセリングやリワークプログラムなども活用しながら「そこまで騙し騙し自分は何をしようとしてたんだろう」、「病気について知らないとだめだ」などと考え始めます。

<準備する>段階:
次第に復職に向けて[病気の正しい知識と対処法を身につけ][働くための生活リズムを整える]意欲が湧いてきます。医師とともに復帰の準備を進めるうちに「体力がちょっとずつ戻っていく」、「リズムができた」、「これだったらできるかな」など、復帰を現実的に考えられるようになってきます。

復職後に再び起きる<空回りの状態>:
そうやって復帰しても、直後は[焦りと再発の恐れとの間の揺れ]に逆戻りすることがよくあります。「またあの状態に戻ったらどうしよう」と不安を抱えながら、帰宅後は「ご飯だけ食べてもう倒れ込むようにして寝てる」日が続き、「心はがんばってたけどやってることはきっとあんまりできてなかった」と焦りが募ります。この時に無理をすると再休職になることがあります。

<実践する>段階:
それでも[体調を自己管理する]、[今の自分を認める]、[ゆっくりやる]、[相談する]、[オンとオフを切り替える]ことなどを常に[言い聞かせ]ながら日々を過ごします。
(実践例)
・「早く起きて、薬を欠かさず飲んで休みをたっぷりとって、その繰り返し」
・「遅れないで欠勤しないで勤務に行くことが最低限のゴール」
・「だめって思われてもいいやーみたいな感じ」
・「割り切ってる。仕事は生活を守る手段だと」
・「3ヶ月、6ヶ月、まずそれを乗り切る」
・「いろんな相談窓口っていうのか、糸は持ってていいんじゃないかな」
・「仕事のことばっかりで占めちゃってるのはもったいないなーって」
・「しょわないしょわないって思って」

<手ごたえを感じる>段階:
そのうちに、「再発は怖い。でも対処の仕方もわかってきて」[病気の備え]ができ、「昔の感覚が戻ってきた」、「1日がすっごい短く感じる」など[仕事に対する意識が変わって(戻って)]いることを実感します。[病気の経験をプラスに捉えられ][サポートの大切さを実感している]ことにも気づき、生活や人との関わりにも変化を感じるようになります。

これらの各段階に影響する<継続的な支え>:
これらのプロセス全体を通して医療者などの[専門的な助言]や[整理するための助け]、職場による[仕事の負荷調整]や[職場の居場所]などのサポート、家族や友人からの[後押しする一言]やリワークの仲間など[回復のモデルとなる存在]が支えとなります。

(注)< >および[ ]:筆者が命名したカテゴリ名、「 」:当事者の言葉

<文献>石澤桂子・辻内琢也・加藤陽子・小川嘉恵・野村忍(2006)「うつによる休職者の職場復帰を促進する心理社会的要因に関する質的研究」心身医学,46,pp591

臨床心理士・公認心理師 石澤 桂子

 

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