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今年の猛暑は厳しかったですね。少しずつ秋の気配が感じられるようになりましたが、新学期を控えて身体や心に不調を感じている人もいるのではないでしょうか。
痛みの分野では心の痛みと身体の痛みには脳の同じ部位が反応するという研究報告があるそうです。脳は心の痛みも身体の痛みと同じように感じているというわけですが、実際には心の痛みやつらさを身体の痛みと同じように自覚し言葉にするのは難しいと感じます。ですから、この時期は特に身体の痛みや不調を訴えるお子さんの、言葉にならない心の痛みに周囲が注意深く耳を傾けてほしいと思います。
カウンセリングに来られる方も、本当の痛みはなかなか言葉になりませんし、ようやく話しても後から告げ口をしたような罪悪感を抱いたとおっしゃる方も多く、心の痛みを言葉にすることはそれだけ難しいことだと感じます。面接ではそうした気持ちを念頭におきながら、話の内容だけでなくその人が体験し感じている言葉にならない痛みも含めて理解しようと心がけていますが、後になって「本当に言いたかったのはこういうことだったのかもしれない」と思うことも少なくありません。さらに、面接が進んでいくと否が応でも痛みや葛藤に向き合っていくことになりますし、日常の人間関係の痛みが私たちカウンセラーとの関係にも映し出されてきて、カウンセリングに来ること自体が苦しくなる時期もあります。
それでも毎回同じ場所、同じ時間に変わらずここにいるカウンセラーとともに心の痛みに耳を傾け続けるうちに、前よりつらさに耐えられるようになった、ふとした時に自分に問いかけていることに気づいた、こんな自分にがっかりするけれど自分は自分、などという声が聞かれるようになります。劇的な変化でなくとも、小さな安堵や希望を感じてカウンセリングを終えていただきたいと思っています。そして、その後も自分の心の痛みと向き合う日々は続くのだろうと思います。
自分の心を知ることは決して楽な道のりではないと思います。カウンセリングの途中でお見えにならなくなる方も一定数いらっしゃいます。そんな時は二人の間に何が起こっていたのだろうかと考えます。真の痛みに理解が及ばなかった、傷口に不用意に触れてしまったのではないかと反省することも多々あります。いろいろな制約の中で来談が叶わなくなることもあると思います。それでもいつかまた、誰かに話してみようかなと思い立ってどこかの扉を叩く日が来られることを願います。
※長らく休止しておりましたカウンセリングの外部受付を再開するべく準備を進めております。お待ちいただいていた方々には申し訳ありませんでした。改めて“お知らせ”でご案内いたします。
臨床心理士・公認心理師 石澤 桂子