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統合失調症は日本の精神科入院患者の半数以上を占め、主要な精神疾患の一つとされています。統合失調症は難治(慢性)となることが多く、統合失調症治療の目標はリカバリー(症状を安定させ、患者が主体的に社会参加している状態)であり、このリカバリーを2年以上継続するのは13.5%しかないという報告があります。そのためリカバリーに至る患者を増やすために、適切な治療が必要と考えられています。
適切な治療とはエビデンス(研究データ)に基づき、リカバリーに至る可能性が高い治療を選択していくことです。今回はそのエビデンスの集積である「統合失調症薬物治療ガイドライン(2022年公開)」をわかりやすくまとめてみました。治療の参考としてもらえば幸いです。
①統合失調症の診断はどのように行われるのか
現状では診断に役立つ検査は確立されていないため、精神症状によって診断される。ただし身体疾患(脳炎や甲状腺疾患など)を除外するためにも血液検査や頭部画像検査が必要となることがある。
②統合失調症の治療には何があるか
リカバリーを目指すために生物学的治療(薬物療法、電気けいれん療法)、心理社会的治療(心理教育、認知行動療法、作業療法、福祉サービス、家族支援など)がある。
③急性期(治療初期)に薬物治療は必要か
精神症状や生活の質の改善において薬を使わない患者と比べて、薬物治療を行った患者は明らかに改善しているため、急性期に薬物療法は強く推奨される。
④症状が安定した場合、薬物治療は減量や中止ができるか
症状が安定した状態で減量や中止すると再発率が増加するため、薬物療法は維持することが強く推奨される。ただし初回エピソード精神病(統合失調感情障害、妄想性障害、統合失調症様障害、短期精神病性障害など、統合失調症と同じ様な症状がみられる病気で、急性期において鑑別が難しく、それらをまとめたグループのこと)において薬物療法を中止したほうが再発率は明らかに高くなるものの、再発しない患者も一定数いることから、2年以上薬物療法を継続した上で減量や中止の是非を主治医と検討するのが良い。
⑤薬物療法の維持治療に持効性注射剤(LAI)は有用か
エビデンスが十分に集積されていないが有用だったという報告もあり、服用を忘れてしまう患者やLAIを希望する患者へはLAIの使用が望ましい。
⑥治療がうまくいかない場合(治療抵抗性統合失調症)の治療は
クロザピンという抗精神病薬を使用することが強く推奨される(入院が必要となるため、当院では使えない)。またクロザピンの効果が十分に得られない場合は電気けいれん療法を併用することが望ましい。
⑦妊娠中の統合失調症の薬物療法はどうするか
新生児不適応症候群の可能性があるが対症療法で治癒することが多く、胎児の先天奇形や神経発達についてリスク増加は認められなかったことから薬物療法を行うことが望ましい。
⑧授乳中の統合失調症の薬物療法はどうするか
薬物が母乳中へわずかながら分泌されるが重大な副作用は報告されていないことから、子供の排泄・代謝機能が十分な場合は授乳を積極的に中止する必要はない。ただしわずかながら母乳に移行されることから子供がウトウトする、体重増加が悪いといったことがみられることがあり注意は必要である。
以上、簡単にまとめてみました。最後までお読みいただきありがとうございます。治療のご相談がある場合は当院でご相談を承っておりますのでご予約ください。
院長 柳原孝章