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新しい年度になりました。今年は遅咲きの桜に門出を祝ってもらった人も多いことと思います。カウンセリングを続けてきた方々の中にも転居や転勤などで、当院でのカウンセリングを終える人が数名います。
カウンセリングを長く続けていると、やっぱり自分の本質は変わらないんだな、人間ってそう簡単には変わらない、本当は見たくなかったけど、などと言われることがあります。当初は、改善したい、解決したいと思って始めたカウンセリングですが、振り返ると、変わらない自分に気づいた、見たくない自分を知った、ということではただ足踏みをしていただけのようにも聞こえます。しかし一緒に時間を過ごしてきた私には、重い足かせをはめられてもがき、落ち込み、不安になりながらも自分の力で足かせを解く術を探し出し、少しずつ軽くなっていく足で自ら足踏みを始めた姿が見える気がします。「自分にがっかりしたけど、ホッともした」といった言葉が聞かれることもあります。
社会生活を送っていると、「ポジティブに」といったある一方向のベクトルに向かうことを求められると感じることがあります。効率化やタイパという言葉を聞くと何か急かされるような気持ちにもさせられます。認められることが励みになることはもちろんありますが、新年度のこの時期は余計にこうした言葉や思いに縛られやすく、そこから外れないようにしなければと無理をして、疲れ果てて精神科に来られる人が多くいるように感じます。
カウンセリングを通して自分の足で足踏みを始めた人たちも、慣れない生活の中でまた新たな足枷が巻き付いて身動きが取れなくなってしまうかもしれません。それでも、それを解く術を持ち合わせている今ならば、自分の足で足踏みを続けながら生きていかれることだろうと思います。
臨床心理士・公認心理師 石澤 桂子