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急に冷えてきました。今年の夏はかなり暑かったので、その急激な変化についていけずに自律神経が乱れやすくなっていますのでご注意ください。
今回のテーマは診療でもよくご質問を受ける「抗うつ薬は依存しませんか?」という質問についてご説明させていただきます。
抗うつ薬とはうつ病などの気分障害や不安障害、強迫性障害といった病気を治療するために使用され、脳内の神経伝達物質のバランスを調整する働きを持ちます。
抗うつ薬は作用機序によっていくつかに分類され、代表的なグループとしてSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)といったグループがあります。抗うつ薬は多くの薬が現在出ており、患者の症状や体質に応じて最適な薬を選ぶことが重要です。
薬に依存するというのは「精神依存」、「身体依存」があり、「離脱症状」と分けて考える必要があります。
「精神依存」
精神依存とは薬物を摂取することで得られる快感や安心感を求め、使わずにいられないという強い精神的な欲求や渇望が生じる状態のことです。薬物を使わないと強い不安や落ち着かなさを感じます。覚醒剤、麻薬タバコ、アルコール、大麻、抗不安薬などの薬物で発生する可能性があります。
「身体依存」
身体依存とは耐性(継続して使用する際に同じ効果を得るために、薬の量を増やす必要があること)を形成する薬物を長期間使用することで体がその薬がある状態に適応し、その薬が体内に必要になりやめられなくなる状態のことです。この状態では継続して使用しないと体が正常に機能しなくなります(離脱症状)。麻薬、アルコール、抗不安薬などの薬物で発生する可能性があります。
「離脱症状」
離脱症状とは薬物を長期間使用し体がその薬がある状態に適応している中、薬物の使用を突然中断または減量したときに現れる身体的な反応です。吐き気、震え、発汗、頭痛、不眠、不安などの症状が現れます。
「身体依存」と「離脱症状」が似ているように思われるかもしれませんが、「身体依存」は耐性を形成する薬物で起き、耐性を形成しない薬物でも「離脱症状」は起こり得るので、「離脱症状」があるからといって「身体依存」になっているわけではありません。
さて、本題の「抗うつ薬は依存しませんか?」という質問の答えですが、抗うつ薬は快感を引き起こしたり、耐性を形成するわけではないため、精神依存・身体依存を起こすことはないと言われています。ただし、抗うつ薬は脳内の神経伝達物質を調整しているため、急に服用を中止した場合に脳がその変化に適応できず離脱症状が生じることがあり、医師と相談の上で徐々に減薬することが必要です。
院長 柳原孝章