ブログ|福岡市西区姪浜の心療内科・精神科|ひとやすみこころのクリニック姪浜院

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心に降る雨をうけとめる船

うだるような暑さの日が続きますが皆様いかがお過ごしでしょうか。今年は九州北部地方で統計開始以来最も早い梅雨明けだったそうです。

 

『海の上に降る雨って、本当に降っているのかどうか確かめられないそうなんです。(中略)たまたま通りかかった船だけが、その雨を見るんです。(中略)自分が見てなかったら、なかったことになってしまう雨ですよ』

 

これは、最近テレビドラマにもなった小説*の中で主人公がつぶやいた言葉です。

来談される方々の中にも、人知れず心に抱いている苦しさや涙がこの海に降る雨のように誰にも気づかれず、あるいは見て見ぬふりをされ、なかったことになってしまった経験のある方がとても多いと感じます。そうした経験が重なると、怒りや悲しみ、独りぼっちの寂しさが募るばかりか、自分自身を信頼し大切にする気持ちまで育めなくなってしまうのも無理ないことです。人ではなく物に助けを求めざるを得なかったり、(意識せずとも)行動で苦しみを解消するしか術がなかったりした結果、新たな苦しみを負って来談される方もいます。援助希求行動-困ったときに他者に助けを求める行動-という言葉がありますが、来談された方々を前にすると、それがいかに難しく勇気ある行動であるかに改めて気づかされます。

 

物語の主人公もかつて誰にも「助けて」と言えずに追い詰められていました。そんな時にたまたま出会った人に心に降る雨を見つけて受け止めてもらった経験によって、日々の何気ない生活の中で出会う人たちの雨を受け止める船となっていきます。そしてまた、自らも受け止められながら長年抱えてきた雨に向き合おうとするところで物語は終わります。

 

受診する、相談するという援助希求にあたる行動には大きなエネルギーが必要となります。まずは、当院のブログの中に、皆様の心に降る雨を受け止める船になる記事が一つでも二つでも見つかれば幸いに思います。

引用:*対岸の家事 朱野帰子著 2018 講談社

 

臨床心理士・公認心理師 石澤 桂子

 

 

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