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新年度になりました。入学や就職などで新たな場に歩を進めた人たちも多いと思います。
カウンセリングや支援の現場にいると、わかっちゃいるけどできない、一歩が出ないと苦しんでいる人たちによく会います。本人たちは怠けているわけでもやりたくないわけでもないことはよくわかります。それゆえに、ついこちらも焦ってしまい、本人たちもそっちのほうがよいと意識的には思っている(あるいは思わされている)だろう方向に足を向けられるようにと躍起になってしまうことがあります。でも、そうすればするほど相手との心の距離が離れてしまったと感じ、後から反省することもよくあります。
足を止めさせているものは前回のブログにもあった“不安や恐れ”であることが多いのですが、いったい何に対する不安なのか、足を止めることで何を得ているのか、何を解消しているのか、という”何”は人それぞれですし、何かを得ている一方で、何かを失ってもおり、一筋縄ではいきません。本当は何を思っているのか、どうありたいのかという、本人もまだ気づいていない奥底にある真の思いを一緒に探していくのがカウンセリングではあるのですが、これまで気づかないことで自分の心を守ってきたわけですし、たとえ気づいたとしても暴かれるような怖さを感じて容易には話せないのももっともなことだと思います。そして、話さないことを選択するのもその人の権利です。
人に心の内を話すとは何と勇気のいることなのかと思います。それでもカウンセリングに足を運んでくださる方々への敬意を忘れず、一歩が出ない苦しさに少しでも近づけるように聴き続ける、一歩を踏み出すその日まで。それを常に肝に銘じていなければならないと思います。
臨床心理士・公認心理師 石澤 桂子