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今年の猛暑は堪えましたね。ようやく秋の訪れが感じられるようになりましたが、まだまだ残暑は続きそうですので皆様どうぞ無理をせずお過ごしください。
さて、以前のブログでうつ病で休職した人々のインタビューをもとに、休職から復職にいたる心理的な変化を当事者の視点から探索した研究を紹介しました(2022年2月『復職までのこころの道のり』←ここをクリック)。カウンセリングでも休職中や復職直後の不安感や孤独感がよく語られますが、無理もないことだと思います。一方で、同じ体験をした人の生の声が支援者の言葉以上に説得力を持って響き、背中を押してくれると感じることもあります。そこで今回は、上記研究データである対象者の言葉をいくつか紹介します。前回の記事も合わせてご参照ください。
休職前の<空回りの状態>
・仕事に穴をあける罪悪感がすごくあって、身体は休めてるけど頭は休めないっていうか。
・なんとか騙し騙ししてきたのが溜まりたまって。
<離れる>段階
・ふんぎってよかった。症状が軽くなったのが一番大きかった。
・最初は全然休んでなかったと思えるぐらい、休めてるなーっていう(ガーっと寝る)時期が来て、ちょっとよくなってきたかな。
<向き合う>段階
・最初はすごい失敗感の塊だったけど、そこまでして何が大事だったのかとかを考える中で、だんだん自分と仕事の距離が離れてきて見れるようになったのかな。
<準備する>段階
・自己管理表を見てると、眠りがどれだけ重要かわかった。
・(復職セミナー参加者が取り組んでいることを)試しに手当たり次第にやって(気づくと)物事の捉え方が少しずつ変わってきた。
・(リハビリ出勤で)やってできたことを数えるようになってきて。そうすると、徐々に身体の症状も少なくなってった。
復職後に再び起きる<空回りの状態>
・(前の復職時は)仕事仕事っていう考えにまた戻っちゃって、(再休職)やっちゃったのかな。
・(再発すると)ずーっと思ってる。区切りのたびにちょっと怖い。
<実践する>段階(前回のブログに掲載)
<手ごたえを感じる>段階
・頑張ってるって思いはないけどそれなりに体は動けるようになって、気づくと休んでなかった。
・再発は怖いけど、避けられないこともあるな。再発した時の対処もある程度わかってきたかな。
・サポートがあることを実感できることが大事だなと。
・(体力の回復が)新たな葛藤で。手綱ゆるめちゃダメというのと、もうちょっと踏み込んだ仕事をしたいっていう。
これらの各段階に影響する<継続的な支え>
・カウンセラーさんに話しながら自分でもう一回思い返したりしてた。
・(同僚の言葉に)すごい泣けちゃって。また職場に帰って仕事したいなって思った。
・(復職セミナーにすでに参加している人を見て)私もこういう風に回復できるのかもしれないって。
これらの言葉はあくまで一例であり、復帰のプロセスも必ずしもこの通りに進むわけではありませんが、復職に不安を感じている方々の復職への道のりを照らし、一歩一歩進む希望や勇気につながれば幸いです。
(注)
・< >および[ ]:筆者が命名したカテゴリ名、「 」:当事者の言葉
・データはすべて論文に掲載されたものであり、結果を改変しない範囲で一部加工している
<文献>
・石澤桂子・辻内琢也・加藤陽子・小川嘉恵・野村忍(2006)「うつによる休職者の職場復帰を促進する心理社会的要因に関する質的研究」心身医学,46,pp591
・石澤桂子(2005)「うつによる休職者の職場復帰を促進する心理社会的要因に関する質的研究」早稲田大学大学院人間科学研究科2005年度修士論文
臨床心理士・公認心理師 石澤 桂子