ブログ|福岡市西区姪浜の心療内科・精神科|ひとやすみこころのクリニック

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トラウマ体験について思う

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年始に起きた能登半島地震と羽田空港での航空機事故により亡くなられた方々にお悔やみ申し上げますとともに、被害に遭われた方々に心よりお見舞いを申し上げます。ここ九州の地においても報道に接し心を痛めている方が多いのではないでしょうか。心身の不調や不安感を感じた方がいらしたら遠慮なくご来院ください。

 

このような体験をトラウマ(心的外傷)体験と言います。最近では日常でもよく耳にするようになりましたが、医学的には「実際にまたは危うく死ぬ、深刻な怪我を負う、性的暴力など、精神的衝撃を受ける体験」であり、直接体験するだけでなく、他者が巻き込まれるのを目撃したり、家族や親しい人が巻き込まれたのを知ったりすることも含まれます。災害、暴力、深刻な性被害、重度事故、戦闘、虐待といった出来事が挙げられ、日本国民の約60%が生涯に一回以上このような体験をしているという報告や、精神科医療を利用している人では94%以上という報告もあります。こうした体験がいかに大きな心の傷となるかがわかります。

 

体験の直後やその体験を思い起こさせる出来事に遭遇した時には、「3つのF」(闘う=Fight、逃げる=Flight、固まる=Freeze)のいずれかの反応が起こりやすいと言われます。しかし、これらは衝撃から心を守るいわば防衛反応で、異常事態においてはむしろ自然なことであり、時間の経過とともに落ち着いていきます。周囲の人のサポートも回復に役立ちます。

 

しかし、同じ体験でもその時の年齢や環境、受け止め方などによって影響が異なり、子どもの頃につらい体験を重ねた人の中には、普段から3Fの状態になりやすいとも言われます。また、トラウマ体験は、心理的衝撃だけでなく身体の怪我や障害を負わせ、大切な人を突然奪い、その人の人生そのものを変えてしまうこともある、何重もの喪失あるいははく奪の体験ともいえます。体験の衝撃が強かったり長期間さらされ続けたりするとうつ病や不安障害、PTSDといった精神疾患を患うこともあります。回復の道のりはらせん階段と例えられることもあり、良かったり悪かったりしながら徐々に回復していきます。

 

カウンセリングに来られる方の中には、他の問題を相談している経過の中で「初めて人に言いました」と打ち明ける方もおり、トラウマ体験やその時の恐怖や怒り、悲しみ、絶望といった感情を他者に語ることがいかに難しいことかと感じます。孤独の中でトラウマ体験を生き延びた自分自身をまずはねぎらってもらいたいと思う瞬間です。体験を心に収め直して先の人生を生きていくのは容易なことではないでしょうが、日常を少しでも安全で安心なものだと感じることができるよう、当院がお役に立てれば嬉しく思います。

 

今もまだ不安な生活を送られている被災地の方々にも、安心して過ごせる日常が一日も早く戻りますよう願っております。

参考資料:

トラウマの伝え方-事例でみる心理教育実践 大江美佐里編 2021年 誠信書房

一般社団法人日本トラウマティック・ストレス学会ホームページ

Trauma Lens-こころのケガに配慮するケアホームページ

臨床心理士・公認心理師 石澤 桂子

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